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「X-ファイル」のファースト・シーズン当時は、製作者のクリス・カーターはシリーズの将来に確固たる自信を持っておらず、各エピソードは自己完結型のサスペンスストーリーで構成され、現在のX-ファイル・ミソロジー(神話)が織りなす深遠さには到達していない。また、この後に続くシーズンで見られる自己パロディやユーモアが取り入れられてもいない。しかし、後に獲得する名声を予感させるだけの要素はすでに現われている。映画としてのプロダクションバリュー(人目を惹くパフォーマンス)と卓越したSFXの技法が盛り込まれ、バンクーバーにある撮影所の照明が荒涼とした雰囲気を醸し出し、マーク・スノーが紡ぎ出す音楽は荘厳な調べを奏で、オカルト、信仰、怪物から都市伝説、陰謀説、SFにまで幅広く題材を求めて巧妙なストーリーが組み立てられている。ファースト・シーズンのハイライトは、FBI捜査官のダナ・スカリー(ジリアン・アンダーソン)とフォックス"スプーキー(変人)"モルダー(デイビッド・ドゥカブニー)という、2人の最も魅力的な人物の登場に尽きる。生真面目な医学博士のスカリーは、FBIで超常現象を扱う部署であるX-ファイル課に配属され、モルダーとともに勤務することになる。モルダーはニコリともせずに冗談を言いながら直感でものを考えるタイプで、超常現象の存在を強く信じており、観客が気づく前に悪者を見抜くほど頭の切れる数少ないTVシリーズの登場人物。何かと対立するが互いに惹かれあった2人の深い友情は、日常生活に奇怪さと恐怖が潜む世界に、人間的な心情をもたらしている。 | |
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